よくあるご質問(建設コンサルタント賠償責任保険)

発注者への法律上の賠償責任

一般的には民法(請負人の担保責任)にもとづいて判断します。
ただし、国土交通省の定める公共土木設計業務等標準委託契約約款(以下、標準契約約款)またはこれと同様の契約書等にもとづき実施される業務については、当該契約書等に定められた契約不適合責任(瑕疵担保責任)の規定にもとづいて法律上の賠償責任の有無を判断します。
法律上の賠償責任を負わないと判断される損害については補償の対象とはなりません。

契約不適合(瑕疵担保)責任期間(標準契約約款)

2020年4月の民法改正に対応して標準契約約款も改正され、従来の「瑕疵」は「契約の内容に適合しないもの(契約不適合)」と文言が改められました。契約不適合責任期間および瑕疵担保責任期間はいずれも成果物の引渡し後、原則として2年または3年とするよう規定しています。ただし、契約不適合(瑕疵)が受注者の故意または重過失により生じたものであるときは、それぞれ次のとおり定めています。

(故意または重過失の場合)

  • 2020年4月改正後(契約不適合責任期間):民法の定めるところによる(注)
  • 2020年4月改正前(瑕疵担保責任期間)  :10年間

(注)2020年4月改正の民法の契約不適合責任期間について

  • 不適合を知った時から1年以内に通知しないときは不適合を理由として賠償請求できない。
  • 不適合を知った時から5年以内、または引渡した時から10年以内に請求しないとき、債権は時効により消滅する。

契約不適合(瑕疵担保)責任期間(民法)

契約に契約不適合責任(瑕疵担保責任)期間の定めがない場合、法律上の賠償責任は民法を適用し判断します。具体的な発注者の賠償請求できる期間は以下のとおりとなります。

受注日が2020年4月以降(民法改正後)

  • 不適合を知った時から1年以内に通知しないときは不適合を理由として賠償請求できない。
  • 不適合を知った時から5年以内、または引渡した時から10年間請求しないとき、債権は時効により消滅する。

受注日が2020年3月以前(民法改正前)

  • 引渡した時から1年間

重過失の判断基準

重過失とは、通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかな注意さえすればたやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに漫然とこれを見過ごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態をいいます。(昭和32年7月9日最高裁判決)

したがって、予見義務違反の程度が著しいか(結果を予見することが可能であったにもかかわらずこれを怠ったか)、結果回避義務違反の程度が著しいか(結果回避措置をとることが可能かつ容易であったにもかかわらずこれを怠ったか)を基準に判断します。

構造物の重要性(用途や目的への影響の大きさ)や修補工事の規模によって判断するものではありません。

重過失と判断される事例

たとえば、以下の場合などは重過失に該当するものと考えられます。

  • トンネル坑口の設計に函渠工の基準を適用し小径の鉄筋を配置した成果品を納品したため、安全性が確保できない構造物となった。
  • 通常検討すべき地震時レベルの構造計算を行わず耐力不足の成果品を納品した。
  • 特記仕様書等の設計図書に記載されている事項を無視し設計条件を満たさない成果品を納品した。
  • 橋長26m以下の道路橋の設計において地震時に不安定となる地盤があることを知りながら道路橋示方書に規定する落橋防止装置を省略した成果品を納品した。

一方で、計算ソフトへの数値の単純な入力ミスについては重過失ではないと判断された事例があります。これは、ミスをすれば重大な結果を招く恐れがあることを認識しつつ慎重に入力を行ったにもかかわらず回避できなかったというもので、予見義務違反の程度が著しいとはいえず、また入力誤りを回避することが容易にもかかわらずこれを怠ったとはいえないため結果回避義務違反が著しいとも認められませんでした。

実際には、ミスの内容、発生の要因、背景、経緯、基準の順守、管理体制等を勘案し、事案ごとに総合的に判断します。

保険適用基準日(損害賠償請求日)

損害賠償請求日の属する保険契約の支払条件により支払責任額を算出します。損害賠償請求日が2023年9月の場合、2023年3月(増額後)の保険契約の支払条件(支払限度額1億円)により支払保険金を算出します。具体的には次の算式で算出した金額が支払限度額1億円以下であるため、7,110万円が支払保険金となります。                                                                                                              (賠償額8,000万円-自己負担額100万円)× 縮小支払割合90% = 7,110万円(ケース①)

ただし、契約不適合(瑕疵)のあることまたはその原因・事由の具体的状況を知った日(認識日)が支払限度額を増額する前(2023年2月以前)である場合は、ケース①の支払保険金の額と増額前の保険契約の支払条件により算出した支払保険金の額を比較し、いずれか低い額が支払われます(注)。この場合、2023年2月以前の支払限度額は5,000万円であるため、5,000万円が支払保険金となります。(ケース②)

(注)損害賠償請求日の属する保険契約の開始日より前に認識日がある場合は、損害賠償請求日の属する保険契約の支払条件により算出した支払責任額と、認識日の属する保険契約の支払条件により算出した支払責任額のうち、いずれか低い金額を限度として保険金を支払います。

1年間に複数回保険請求した場合の支払限度額

既に保険金が支払われた場合の当該保険期間の支払限度額は、当初設定した支払限度額から、支払済保険金を控除した残額となります。
したがって、1億円から6,000万円を控除した4,000万円となります。

注意すべき事例①(法律上の賠償責任)

建設コンサルタント賠償責任保険は、発注者または第三者に対して法律上の賠償責任を負担した場合の損害を補償の対象としています。
追加購入した鉄筋の費用は、正しく設計した場合であっても発注者が負担するべき材料費です。受注者に法律上の賠償責任が発生しないため、補償の対象になりません。

注意すべき事例②(法律上の賠償責任)

標準契約約款第53条の規定により、発注者は契約不適合(瑕疵担保)責任期間である3年以内でなければ契約不適合(瑕疵担保)を理由として請求等をすることができません。したがって法律上の賠償責任が発生しないため、建設コンサルタント賠償責任保険の補償の対象にはなりません。

注意すべき事例③(法律上の賠償責任)

改正後の民法において、発注者は契約不適合を知ったときから1年以内に通知しなければ契約不適合を理由として請求等をすることができません。したがって法律上の賠償責任が発生しないため、建設コンサルタント賠償責任保険の補償の対象にはなりません。

注意すべき事例④(保険約款上の免責)

建設コンサルタント賠償責任保険は「業務または工事の履行不能または履行遅滞に起因する賠償責任」を免責としております。工事中断にともなう施工者の手待ち費用については当該免責条項に該当するため補償の対象になりません。

加入方法(包括契約)

建設コンサルタント賠償責任保険は、所定の期間に受注する業務をすべて補償対象とする包括契約方式(保険期間1年間)となっておりますので、受注業務単位で加入することはできません。

加入方法(団体契約)

建設コンサルタント賠償責任保険は団体契約のみの保険制度として運用しているため、団体契約以外の加入はできません。当社でご加入いただくためには下記4団体のいずれかに所属していただくする必要があります。

  • 一般社団法人 建設コンサルタンツ協会
  • 公益社団法人 全国上下水道コンサルタント協会
  • 一般社団法人 農業土木事業協会
  • 建設コンサルタンツ協同組合

保険金の支払いまで

保険会社は、建設コンサルタント業務の実務専門家、学識経験者、弁護士などの有識者で構成される建設コンサルタント賠償責任保険「事故審査会」を設置しています。事故が発生した場合、ご提出いただいた資料をもとに調査した結果を「事故審査会」に諮り、保険会社がその意見を踏まえて総合的に判断します。

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